<貧困>とは何か〜湯浅誠「貧困襲来」を読む その4
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の続きです。
前回で、「<貧困>とは「溜め」がないこと」とわかりました。
そして、「溜め」が可視化されないことから、<貧困>も見えにくいことがわかりました。
今回は、元々見えにくい<貧困>を、更に可視化から遠ざけている要因を探ります。
<貧困>は隠れ上手
<貧困>は、可視化しにくいものです。
それ故、<貧困>は様々な問題に隠れて生息します。
多重債務、自殺、給食費の未納、高校授業料の未納、「ニート」、知的障害者の犯罪……そもそもが「問題」なのかどうかと言うものも含まれています。
「ニート」などはもろに<貧困>を覆い隠していますね。
給食費の未納
マスコミは「ゲーム脳」と同じロジックで「ベンツに乗っているくせに給食費を払わない親がいる」とセンセーショナルに報じ、庶民はそれに怒りをぶつけて憂さを晴らしていますが、文部科学省の調査に拠れば、給食費を払えないという家庭は全国の学級にあまねくあり、その多くは困窮から「払いたくても払えない」というものでした。
高校授業料の未納問題
高校授業料の未納問題では、アンケートの仕方自体が恣意的で、「経済的な要因であると思うかどうか」という、印象を語らせるというものになっていました。
そのようにして「敵」が作られます。
<貧困>は、「○○問題」の影に隠れてしまいがちで、よく目をこらさないと見逃してしまいがちです。
4重の否認
が、これに加えて湯浅さんは、<貧困>の可視化を妨げている「4重の否認」を挙げています。
- 政府の否認
- マスコミ報道の否認
- 市民の否認
- 自身の否認
です。
政府の否認
「捕捉率」という数字があります。
生活保護基準以下で暮らす人のうち、実際に生活保護を受けている人がどのくらいの割合なのかを示す数字なのですが、日本では公式には1966年を最後に、40年以上調査をしていません。
諸外国ではあり得ないことです。
アメリカでは毎年貧困の調査が行われ、2006年は8人に1人が<貧困>だと発表されました。
イギリスの捕捉率は90%、ドイツでも70%と言われています。
いわゆる「ワーキングプア」が500万世帯と言われていますが、「ワーキングプア」の定義は「働きながら、生活保護水準以下で生活している人」です。
現在日本で生活保護を受けている世帯は100万と言われていますから、この数字だけでも捕捉率は20%と言えます。非常に低い数字です。
厚生労働省は、調査しない理由を「様々な条件が関係するので、調査しても意味がない」と言っているそうですが、ぶっちゃけ、悪い結果が出るのが目に見えているので逃げているだけ、としか思えません。
マスコミ報道の否認
朝日新聞で1990年から2002年までの13年間、<貧困>という言葉が、国内の<貧困>を表すものとして使われたのは7タイトルだけだったそうです。
13年間で7タイトル。2年に1回だけ。
いかに<貧困>という言葉が避けられてきたのかよくわかります。
それに対し、「格差」は毎日のように使われています。
かくして、<貧困>は「格差」の影に埋もれ、それ自体として問題にされなくなります。
自分自身の否認
政府もマスコミも<貧困>について述べない中で、本人も自分が<貧困>であることをなかなか認めたがりません。
これは、きわめて自然な感情だと思います。
<貧困>はあまりにも重苦しい。だから、そのイメージを負いたくないという気持ちは誰にでもあると思います。
しかし、本人が否認したときに、それに便乗して「<貧困>なんて無い」という人たちがいます。これは許せないことです。
目をこらして、<貧困>を見定めることが、今大切になっています。
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