「出版大崩壊」を読んだ
インターネットが書店を殺すのか: 304 Not Modifiedさんの記事に触発されて、3ヶ月ほど前に書いたものだけれど、転載します。
本屋さんの質って、店員(アルバイト)の力量がだいぶ影響すると思うんです。
……
本屋でバイトするって本が大好きなわけですよ。CDショップだって音楽が好きだからそこに行くわけで。そして、好きなものならば表現したいことってのがあると思うんです。自分が推したものを買ってくれるとうれしいですし、それを「良かった!」と言ってくれて、あなたのお薦めをお願いしますなんて言われたら店員冥利に尽きるじゃないですか。
以前はそうやって表現できる場所って、店舗でしかなかったと思うんですよ。
……
だから、自分の好きなものを多くの人に広めるのに、書店やCDショップで働かなくてもできるようになったんですね。
……
Amazon.co.jp が便利すぎて書店に足を運ばなくなるというものではなく、好きなことを表現する場所としてインターネットを選択することで現場で表現しようとする人が減り、現場の質が下がること。それにより、系列店の陳列を上層部で統一することで品質を保つようになり、現場で表現できなくなる。そうなると、本当に好きな人が現場に集まらなくなり、さらに店員の質が悪化し、本当に売るだけの存在になってしまう。わくわくしない店に人は集まらないよ。一方で、目利きのできる人はネット上で自分の好きな本を紹介する。
……
だから、リアル店舗で商売をしているみなさん、もっと頑張ってください。日本の商売の衰退はあなたたちにかかっているんですよ。
(上記記事より)
これは構造的に難しいのではないか、というのが、わたしの感想です。
では、その構造とはなにか。
それを以下、読み解いていきます。
「出版大崩壊」から
おもしろかった。
ダイジェスト
- 日本の著作権法は電子化への規定がない。
- このままではプラットフォーム(AmazonやGoogle)が、手数料だけ抜いておいしいところを持って行ってしまう
- ところが、著作権に関して、出版社、著者、法律家が足並み揃わず、手をこまねいている状態
- 電子出版では既存の出版社・著者は儲からない−売り上げのほとんどはケータイのポルノコミック。
- 衰退するもの1:質のよい書籍
- 衰退するもの2:地方の書店
- しかし、著作権にぶら下がり、再販制度におぶさった状態でいいのか?
- CD、DVD、GAMEなどはすでに洗礼をうけている。もうミリオンはない。
- てかぶっちゃけ、人口の問題だから
- ではどうするか?
という内容。
自分がピピっと来たのは、
- ホノルルの書店の話。ゆっくりと本を眺められ、欲しい本を手に取るとそこにあるソファに座りゆっくりと読める。そんな書店が無くなった。
- CD、DVD、GAMEを先例と見る。
など。
まだあるかもしれない。
今回は、「新しい書店の形」について書きます。
次回は、「CD、DVD、GAMEを先例としてみる」を書きます。
あたらしい書店のかたち
今の書店は大きく二つに分かれている。
この二つの大きな違いは、「書店」か、「書店+α」か。
日本の書店は、ざっくり言うと「棚貸し」商売。
日本の出版業界の構造
日本の出版業界の構造は、
- 約4,000の出版社
- 2つの取次(流通網を握っている大会社)
- 約16,000の書店
という構成。
取次と呼ばれる、出版社と書店を仲介する企業は30社ほどあるが、教科書専門だったりして、汎用的に書籍を扱っているのは日販とトーハン。
そして、取次が握っているのは、全国に広がる書店への流通網。
日本の出版は、取次から書店への、雑誌の流通網が整備されていて、その流通網に乗せることで配送単価が安くなる*1。
書籍流通の仕組み
ざっくり言うと、
- 毎日新しい雑誌が配達され、書店は棚に雑誌を置く。
- 一定期間が過ぎると雑誌は同じ流通網を逆向きに送られ、多くは裁断される。
- 一般書籍はその流通網に乗って書店に届く。これも一定期間後、取次に戻される。
つまり書店とは、流通網で流れる雑誌・書籍が一定期間ディスプレイされる場所。
書店は本を買わない。
売れた本だけ、手数料を請求する。*2
(だから万引きされるとあっけなく潰れる)
滞留する場所、という意味では、整頓された倉庫と似ている。
本は重い。
毎日ディスプレイを入れ替えるという重労働が書店の主な仕事だという面からみると、書店とは本を得る場所というより、荷物をどんどん入れ替えていく場所だと言える。
一般の書店で、本の入れ替え・整理以外に労働力を使おうとすると、すごく高コストになる。
ディスプレイし、ポスターを張り替え、店内を明るく照らして……それ以上を行う動機付けがない。
取次から書店への入荷を配本と言うが、配本される本の種類・部数などは、取次側が決定するのが基本らしい。
これをパターン配本という。
パターン配本に従がえば、工夫の余地も少なくなるが、コストもそれだけ下がる。
「買い切り」など論外。リスクが高すぎる。
なお、Amazonは巨大な流通網を独自につくり、倉庫の集中と流通量の大きさによって、配送コストを大幅に下げている。
つまり、書店というよりも、ひとつの流通網だと考えられる。
*3
書店とは、リアルにしろネットにしろ、流通網の中間点、というのがその本質。
なので、「読書空間」を提供する場としての書店、は、これからのあたしい課題だと思う。
自分が知っている取り組み
- カフェと併設して、買った書籍をその場で読めるサービス
- CD・DVDやゲームなどの総合書店で、一角を子どもたちの「デュエルコーナー」として開放し、無料で安全に子どもたちが遊べる「たまり場」を提供している。照明を明るくし、小奇麗にして、死角を無くすと、見た限りでは万引きはしにくそうだった。
多分今後、縦(出版社−版元−流通−大手・零細小売)と横(他業種、地元店)の交流を行い、様々な取り組みによって「読書空間」をつくっていく取り組みが必要になっていくと思われる。