「ゼクシィ」商法に見る「障壁破壊商法」
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記事の要点
(本文のまとめは長くなったので一番最後に移しました)
ゼクシィの20年は、ローカル産業だった「ブライダル産業」の、情報の障壁(価格、プラン)という抵抗を突き破った歴史。
ホテル業界は危機感をいだいて相当抵抗しただろうが、それに対してリクルートは各個撃破を仕掛け、結果、業界全体を「ゼクシィ」というプラットフォームに載せることに成功した。
「相場」は、「ゼクシィ」の中で生まれ、「ゼクシィ」で確認するほかなくなった。
「ゼクシィ」ビジネスの一般化
このリクルートの方法は、以下のように一般化出来る。
「成長産業であるのに、情報障壁により、結果としてローカルビジネスが栄えている分野で、障壁を破壊し情報を流通させること」
- 成長産業……結婚というライフサイクルのひとつ
- 情報障壁……地域、業種、業界で、代替可能な商品を扱っているのに、情報が交換されていない。
このことにより起きる結果は3つ。
- 今まで表に出なかった価格が明らかになり、「相場」が形成され、安売り合戦が始まる。
- 参入障壁が崩れ、あたらしいプレイヤーが参入し、競争が激化する。
- 情報が価値を持ち、情報を一手に握る「プラットフォーム」が一人勝ちする。
類例
1.ライフサイクルに依拠した産業が当然伸びる。
例)学生の汗と涙を絞り出して換金。
2.購入者数が多く、一定サイクルで買い換えられる生活用品は伸びる。
例)家電業界が沈黙した日。
今後、「大幅再編」が行われるであろう業界。
- たくさんの人々の、ライフサイクルや生活サイクルに依拠した商品を扱う業界で、
- ローカルで、ネットで比較ができても在庫がなく、
- 事務所に行かないとホントのところの取扱商品がわからない、他と比較するのも難しい。
そんな商品・業界がターゲットになる。
「大幅再編」が行われそうな例
たとえば、地域の賃貸不動産業界は、そんな場所。
- ライフサイクル(就学・就職・転勤・死去など)や年サイクルで借り換えが行われる
- ネットの比較サイトで物件を調べても、ほとんどが「見せるだけ」「実際には借りれない」物件で、
- 事務所に行って初めて賃貸不動産業者の持っている物件を紹介されるので、他と比較しづらい。
多くの業種が「障壁破壊商法」にさらされている
多くの業種は、たぶん「障壁破壊商法」の対象で、他業界に虎視眈々と狙われている、と思う。
そして、その牙から逃れることはできない、と思う。
なにせ「消費者の支持」がつくのだから。
参考
婚姻件数の推移、首都圏の挙式・披露宴総額の推移。
披露式の値段が、いまだに年々上がっているとは思わなかった。
本文の要点まとめ
<背景>
- 「ブライダル産業」は、1960年石原裕次郎氏と北原三枝さんが原型らしい。
- それ以後ホテルや結婚式場は、地域で「棲み分け」ていて、それぞれの価格はわからなかった。
- 契約プランも、一件一件、わざわざ駅前や百貨店にある婚礼専用カウンターに出掛け、エージェントから接客を受けながら比べていた。一件の契約プランを調べるコストがとても大きかった。
<ローカルの障壁の破壊>
- 出稿広告に、業界のタブーだった、結婚式と披露宴の料金見積もり“比較表”の提出を、義務づけた
- ローカルで「棲み分けていた」業界を、業界外の企業(リクルート)が参入し、「比較表」でその障壁を取り去った
- ローカルでは、「棲み分け」により競争がなかったため、婚礼プランはほぼ同一だ、という事実が、あからさまに示されてしまった。
- そのため、主に「ゼクシィ」上で価格競争が始まり、価格破壊につながった。
<「ゼクシィ」メディア経由で、新規参入が可能になった>
- 「婚礼プラン」の多様性で勝負する「ゲストハウス・ウェディング」などの新しい業態が参入、「ゼクシィ」上での写真広告により、ホテルの持っていた利益のパイが大きく移動した。
- 契約プランをゼクシィで一覧でき、複数の契約プランを調べるコストが格段に小さくなった。
<「ゼクシィ」の一人勝ち>
- 広告代1ページ100万円。売上高500億円。情報プラットフォームを作り上げたゼクシィの「言い値」で広告価格は決まる。
※なぜ、他の出版業者は参入できないのか?
<業界全体の衰退>
- 婚礼数の減少。「ブライダル産業」自体の衰退が起きている。