reponの忘備録

「喉まででかかってる」状態を解消するためのメモ

「自分探しがとまらない」感想

いわゆる「積ん読*1になってしまう本が多いので、僕はほとんど本を買いません。


読みたいと思った本でも図書館にはいるのを待って、借りてきて読みます。読んだ上で、この本は手元に置いておきたいと思った本だけを買います。


ちなみに僕の手元にある本は、著者名で行くと内田樹さん、スラヴォイ・ジジェク東浩紀さん、コミックスだと「ARIA」よつばと」くらいです*2


何が言いたいのかというと、新書は面白そうでも買わないのが自分の主義でした。

しかし、なにやら面白そうなので買ってみたこの本*3


結論。買って正解。これは僕にとって、上記の「手元に置いておきたい本」の一覧に新たに書き込まれた本です。

「新書はタイトルが9割」メソッドに従って乱発される、「タイトルでおなかいっぱい」の本とは一線を画しています。


これは良書。どなたでもとりあえず一読をお奨めします。You、買っちゃいなyo!

感想

レビューは多くの方が優れたものをお書きになっているので(たとえば、優れたレビュー「http://d.hatena.ne.jp/FUKAMACHI/20080221」さん)、簡単に感想を。


4章立てになっていて、どの章も興味深いのですが、第3章、「自分探しホイホイ」と筆者が名付けた、「自分探し」に走ってしまう若者を捉え搾取する産業の総覧が非常に興味深いです。


自己啓発?そんなものにひっかかるかよ m9(^Д^)プゲラ」と思いこんでいる自分が、いかに「自分探し産業」に囲い込まれやすいのかがわかりました。

というか、自分に迷う人はたいがい引っかかると思いました、この本を読むと。

「自分探しホイホイ」というのはほとんど自分でも気づかないうちにその枠の中に取り込まれる、そういうものなんです。

多数の例が挙げられていますが、リアルタイムで「お、これっていいじゃん」と思った出来事が客観的に記されていて、ああ自分もコミットしていたんだな、とそこで初めて気づきました。僕も例のバンドやってたしね。


この本は、筆者の主観を極力排し、若者の「自分探し」という現象(あくまで現象で、実在ではない。この点非常に重要なので、後で別エントリを書きます)の歴史と、それを取り巻く状況を博覧的に一望できるような内容になっています。


「自分探し」という現象そのものへの筆者の判断は保留され、その可否は読者にゆだねられています。

「自分を決めても決めなくてもそれは『自由』だけど、自分ではそのつもりが無くてもいつの間にか『自分探しホイホイ』に引っかかっちゃうことがあるから気をつけてね」という感じでしょうか。

著書そのものの記述形式が、「資料のまとめ」になっているところに、判断の保留の姿勢が貫かれていると思いました。


「自分探し」現象は、自分が不安になったときに、自分の内部に対して、また外部に対して発動します。

そのメカニズムについては、以下の歴史的著作が詳しいです。


現在は、この「自由からの逃走」で示されたような、「自由」が満ちあふれている時代なのでしょう。そして、それ故に誰もが、構造的に「自分探し」に駆り立てられる時代なのだと思います。

その時代を歩いていくガイドマップとして、本書は読んでおくべきではないかと思いました。


しかし、膨大な資料を手際よくまとめられるのはすごいな。さすがプロ……

ついでに

あと、ちょっと思ったんですが、

「気づき」とは自己啓発セミナーの世界でよく使われる用語である。

UWFインターや安田忠夫にやたらと「気づき」とか謎かけをしていたアントニオ猪木は、自己啓発をしていたのか……

         r--、_
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             l      /_ ノY `ー‐' '   '⌒) ノ
             l    ,../ ./´ ,ゝ、_    _,.=ニ´ l´
             l   r'-、ヾ,/  l_,..ニ=‐'´.    ̄!
              l r´`   li,r'"´       _,...-‐┤
               ! ヽ.   ,!     _,.-‐''´     ヽ、
                 l.l/ヽ  ,!、__,.r '´           ヽ
               i´,∧ /  `ー、              l
               ll l. ∨      `'´          l
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            l!    ll ``ー-、___     `ーノ
           /l   ./l       ̄``ー‐―l
             l .ト、,r'´ l            l
            l ,!   l               l
            l,!     l              /
           l!    l             l


最後に私からみなさんにメッセージを贈りたいと思います。
人は歩みを止めた時に、そして挑戦を諦めた時に年老いてゆくのだと思います。
この道を行けばどうなるものか。
危ぶむなかれ、危ぶめば道はなし。
踏み出せばその一足が道となり、その一足が道となる。
迷わず行けよ、行けばわかるさ。ありがとう!!
いくぞー!! 1・2・3 ダー!!

確かに自己啓発っぽい雰囲気だわな。


Uの遺伝子は、僕の中に残っているけれどね。

*1:積ん読」だとインテリっぽいけど、「ツン読」だとちょっと萌えるわね

*2:全然関係ないけれど、「浦安鉄筋家族」を蔵書として入れている都内某区立図書館最高!

*3:もちろん、著者ご本人からトラックバックが来たのも一つの理由ですが、あのエントリでは、著書についてではなく「自分探し」という言葉の気味悪さについて扱っています