「出版大崩壊」を読んだ(続き)
「出版大崩壊」を読んだ - reponの日記 ないわ〜 404 NotFound(暫定)の続きです。
前回は、「新しい書店の形」について考えました。
今回は、「CD、DVD、GAMEを先例としてみる」を書きます。
CD・DVDやGAMEを先例とし学ぶ
ここはさらに狭い自分の観測範囲だけ。すみません。
「CDが6千枚ほどでオリコンチャートの10位以内に入れる」ことを著者は嘆いているが、その枚数は市場規模そのものを表しているのだと思われる。
音楽性がないから売れないのではなく、適正に売れてその枚数なのだと思われる。
だって人口が減っているんだもの。
AKB48が売れたのは、CDの使用価値を「メディア」から「付録付きメディア」(食玩のようなもの)に変えた−ひとり1枚ではなく、ひとりが何枚も買う「意味」をもたせた−から*1。
逆に、枚数が捌けないCDが音楽的に問題あるのかというと、そんなことはない。
最高の音楽を提供しても、CDだけでは売れない*2。
みんなMP3に変換して持ち歩いたほうがラク。
CDを買うインセンティブは、CDそのものには少ない(付加価値が付くと別)
こうなると、逆手にとって「体験」を売るのがひとつの方策と考えられる。
例2:同時体験
「プロの犯行」という言葉が動画サイト界隈で言われてる。
セミプロ、またプロが、ニコニコ動画などで、ハンドルネームで作品を発表し、ファンを獲得していく。
日々、視聴者が「発見」という体験をしながら、大きなうねりを作っていく。
この例では、アニメやゲームの公式ファンサイトが非常に参考になると思う。
<例>「ひぐらしのなく頃に」
局所的だが、深く刺さる体験として、コンテンツとプラットフォームが絡み合っていた、稀有な作品。いわゆる「見えないヒット」として現れてきた経緯を持つ。
4年間にわたり、半年ごとに1話ずつ発表されたこの作品は、4年間かからないと謎は明らかにならず、そしてほとんどの人が謎をとくことができなかった。
その「謎」の正統性も含めて、公式ファンサイトの掲示板はすさまじい勢いの書き込みで溢れ、謎の考察の文章がネット上に大量にアップされ、それらがマッシュアップされた。
二次創作が多くなされ、公式ファンサイトも推奨し、オリジナルのゲームに取り込まれ、「ひぐらしのなく頃に大賞」というイベントが開催されるまでにファン層は広がった。
この現象がおもしろいのは、原作である公式のゲームはあくまで同人ゲームとして発売されていたことだ。
wikipediaに関連商品が網羅されているが、これらのうち、原作が最も手に入りにくかった。
この作品が発表された2002〜2006年の間は、TVアニメになるほどの人気を誇りながら、関連商品は手に入るのに、原作が手に入らないという逆転現象が起きていた。
そのことがゲームに稀少性を与え、さらにゲームを手に入れたいという欲望を喚起した。
ゲームを手に入れるところから、ゲームのプレイ体験が始まる*3。
今だと、Amazonでも同人作品を取り扱うようになったので、「ひぐらしのなく頃に」のゲームそのものを買うことが出来る。
最近のヒット作品は、コンテンツとプラットフォームを組み合わせ、そこでしか起きない「体験」を作り出しているものが多い気がする。
結論2
「体験」型のような、コピー出来ない生産物を販売する。
一回性そのものを販売している手品、砂絵などが参考になるのではないか。
もしくは、コピー出来るものに付加価値をつけて売る。
書籍に一回限りのIDをつけるという試みがある。
この本は、書籍付属のIDでweb上のサービスページにアクセスできるが、IDは一回のみ有効である。さらに、コピー出来るものは「経典」として流布し、その派生品に付加価値を付けて稀少性を担保する。
メディア(コピー出来るもの)をプラットフォームとして、そこから「モノ」に関連させて生産物を作っていく。
ただ、この結論では、現在の出版規模を維持することは出来ない。
CD、DVDなどの先例に学ぶならば、まず、現在の出版の市場規模は確実に縮小していくだろうという前提からはじめなければならない。